日本酒の健康的な飲み方と、歴史や知識あれこれ

日本酒の基本的な原料は米と米こうじと水であり、他に余計なものを加えることがないため、適量を守れば極めて健康的な飲み物です。

 

養生訓や大和本草の著者として知られる貝原益軒は、常温の温酒を飲むことを勧めています。
日本酒が体にとって健康的というのは、温めて飲むという文化があるためです。
現在では冷酒を好む人も多くなりましたが、江戸時代には、武士や町人も含めて日本酒をお燗にして楽しむことが一般的でした。
アルコールは胃と腸から吸収されますが、冷たい状態では胃壁から吸収されることがなく、腸に届くまで時間差が生まれます。
冷やしたアルコールを飲むと、ある程度の時間が経過してから急激に酔いが回ってくることになります。
このため、冷やしたアルコールは必要以上に飲みすぎてしまうことになるわけです。
程よく温めた日本酒を飲むと、アルコールが吸収される過程で次第に血行が良くなり、体もポカポカに温まります。
冷たい酒を飲んでも結果的には温まるわけですが、一時的に胃腸を冷やすことになるため、冬の時期には負担が大きくなるようです。
余談として、ビールは冷たくして飲むことが一般的ですが、上面発酵のエールはお燗のように温めることもあります。
エールはキンキンに冷やすよりも常温に近いほうが旨味が感じやすいため、温めて飲むことにも適しています。

また、日本酒においては、純米から作る製法や工程が重要です。
完全発酵と呼ばれる技術では、最後まで酵母を十分に働かせて糖分やアミノ酸を使い切ることで、濁りのない味を持った日本酒になります。
これは醪(もろみ)の中に未分解の成分を残さないようにするための基本です。
ところが、大量生産の日本酒の中には、短時間で製品化するために途中でアルコールを添加する製法をとっているものが多数あります。
途中でアルコールを添加すると、発酵が途中で止まってしまうため、未分解の糖分などが増えて後味が悪くなることがあります。
健康のことを考えたとき、しっかりと完全発酵させた日本酒を選択する方が良いのは明らかですね。
丁寧に作られた本当に良い酒を適量飲むことで、身も心も満足して健康的になるわけです。

東洋医学的な考えでは、酒は百薬の長と呼ばれています。
古代中国の古典には天の美禄という表現もありますが、これは酒は適量だけ飲めば健康的な飲み物であることを意味しています。
大量に飲んでしまえば酒ほど健康を害する飲み物も珍しいとされており、昔から適量を飲むことが重要だったことが分かります。
薬膳や漢方の分類では、酒は温熱性の食材ですが、アルコール度数が高いものは大熱に分類されることがあり、体の温めすぎには注意が必要です。